このところ、政治の場で、日米地位協定の改正要求に関する言葉がすっかり消えてしまった。
ひところは、あれほど皆が口にしていたのに、である。
それに呼応するかのように、米軍の日本支配がますます横行している。
きのうの各紙が一段の小さな記事で教えてくれた。
日米共同訓練でオスプレイが四国で初めて使用されたと。
実は、オスプレイが「はじめて使用された」と報じられたのはこれがはじめてではない。
その他の地域においても、次々と、なし崩し的に、「はじめて」使用されてきたのだ。
いまや当たり前のように日本全土でオスプレイが飛行するようになったのだ。
もう何年前になるのだろうか。
はじめてオスプレイが日本に飛来したとき、日本中が大騒ぎになった。
その時私は、「オスプレイが日本国中に飛来する日」と題して警告を発した事があった。
まさかその日がこんなに早く現実になるとは思わなかった。
それもこれも、安倍政権の下で、日米同盟関係の重要性が神聖化され、永久化されるようになってしまったからだ。
そう思っていたら、情報月刊誌「選択」の最新号(12月号)に要「安倍政権も触れぬ『日米地位協定』」と題する記事を見つけた。
そこで書かれている事は一言で言えばこうだ。
日本の国会で米軍の特権的な地位がやり玉に挙がり、世論も喚起される。
そして、それが「米軍にも日本の法律を適用させよう」という動きにつながる。
しかし、もしそうなったらどうなるか。
そもそも日米安保条約の実態を知らない米国議会では、「我々が日本を守っているのに何を言うのか」との声が噴出する可能性が出て来る。
そして、その筆頭格こそがトランプ大統領なのだ。
大統領再選まで一年を切り、安保や経済で対日圧力を強めるこそすれ、弱めることのないトランプ大統領がそう言い出す。
それこそが、日本政府が恐れる最悪のシナリオであるというわけだ。
だから、かつては「日米地位協定の改定を実施し、日米の真のパートナーシップを確立する会」の幹事長として盛んに改定を叫んできた河野太郎防衛相(前外相)も、「NATO加盟国の一員として相互防衛義務を負うドイツやイタリアとは異なる義務を負う日本で地位協定が異なることはありうる」と改定に消極的になり、「日本をとりもどす」はずの安倍首相は主権を取り戻そうとしないのだ。
選択の記事は、それでいいのか、で終わっている。
しかし、この選択の記事が喝破した現実は深刻である。
その深刻さとは何か。
それは、米国のほうから日米安保を止めると言い出す事だけは絶対に避けたいという暗黙の了解である。
そしてこの暗黙の了解は、そのまま野党に向けられることになる。
もし野党が日米地位協定の改定要求を本気で行えば、米国が日米安保破棄を言い出しかねない。
その時、日米関係を損ねたという猛烈な批判が野党に向かう。
その批判に耐えられる野党は今の政治の中では皆無だ。
もし、ひとり共産党が、それでも日米地位協定は改定すべきだと主張すれば、だから共産党なんだ、共産党には政権は任せられない、と烙印を押される。
日本の政治の限界は、主権放棄の日米地位協定の改定、すなわち日米安保体制からの決別を、誰も本気で言い出せないところにある。
それを教えてくれた「選択」の記事である(了)
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