トランプ大統領が香港人権・民主主義法案に署名したというニュースが流れた時、私は予想が外れたと思った。
ついにトランプ大統領が中国との対決に舵を切ったと思った.
これまでの報道によれば、どうせトランプ大統領が反対しても、超党派の議会が拒否権を発動すれば成立する。
しかも、トランプ大統領が署名しなくても、議決から10日経てば自然成立するという。
それなら、態度を明かさないまま自然成立させればいいのだ。
自分は賛成しないが、米国民を代表する議会が超党派で決めた事だ。
中国に文句があるなら、米国民に言ってくれ、そう言わんばかりに態度を表明せずにいたら、中国に嫌われずに、中国に最大の圧力がかけられる。
まさに一石二鳥だ。
私はそう勝手に解釈していた。
少なくとも自然成立直前まで、トランプ大統領は態度を明らかにしないと高をくくっていた。
だから、このタイミングで署名したというニュースを聞いて、意外だと思ったのだ。
これで米中貿易協議も厳しくなる、そう思ったのである。
ところが、署名した時のトランプ大統領の発言を知って訳が分からなくなった。
なにしろ、こう言ったのだ。
「我々は香港の人々を支持しなければいけないが、私は習氏も支持している。彼は私の友人であり、素晴らしい人物だ」と。
じゃれ合っているのではないか。
そう思っていたら、きょう11月29日の朝日新聞の、「いちからわかる!米国で成立した香港人権・民主主義法って?」という解説記事を読んで合点がいった。
この法律は、議会が米国政府、つまりトランプ政権に対して、香港の人権状況の調査を求め、人権・民主主義が不十分であれば必要な措置を取ることを求めるものなのだ。
つまり、すべてはこれからトランプ政権がどう判断するかという事なのだ。
しかもである。
今度成立した法律は、1997年に香港が英国の植民地から中国に返還されることを見越して、米国議会が1992年に成立させた「米国・香港政策法」の修正版に過ぎないという。
その法律で、すでに中国が香港の「高度な自由化」の約束を果たさないと米大統領が判断すれば、ビザ発給や関税などで香港を優遇することを止めるという決まりがすでにあったというのだ。
何のことはない。
この法案が成立しても、トランプ大統領が中国に厳しい判断をしなければ何も変わらないのだ。
そのことをいち早くテレビで言ったのが木村太郎氏だ。
並み居る解説者が、これで米中関係は厳しくなると騒ぎ立てている中で、ただひとり、トランプが厳しく出ることなどありえない、と笑い飛ばしていた。
私は木村氏が正しいと思う。
そういうことなのである。
トランプと習近平はパワーゲームをやっているのだ。
議会や世論の手前厳しい態度を取らざるを得ないが、内心はどちらも仲良くやりたいのだ。
要するに、世界の二大覇権国家が、国益をかけてじゃれあっているのである。
そこを見抜かない限りバカを見るのは日本だということになる(了)
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