私はトランプ大統領がINF全廃条約から離脱宣言をしたのを見て、その日の2月2日のメルマガで逆説的にこう書いた。
あえてこれを歓迎すると。
日本にとって大ピンチだがチャンスに変えられると。
つまり、いまこそ、唯一の被爆国であり、憲法9条を持つ日本は、中国も巻き込んで、米中ロによる本物の中距離核兵器全廃条約の実現に向け、その先頭に立つべきだと。
ところが、そのような提言をする政治家や識者はこれまで皆無だ。
むしろ、だから日米同盟は強化されなくてはいけない、という意見ばかりが目立つ。
2月8日の日経新聞オピニオン欄に掲載された秋田浩之記者の主張「Deep Insight」はその典型だ。
彼はこう主張する。
離脱を先に決めた米国を批判する声も多いが、残念ながら米国の決断はやむを得なかったと。
ロシアは条約違反を繰り返し、事実上条約は骨抜きにされていたからだと。
おまけに全廃条約に加入していない中国のミサイル増強は放置されたままであるからだと。
だからこそ中国を加えて米ロ中によるあらたなIFN全廃条約づくりに着手しなければいけないのだと。
ここまでは、まったく同感だ。
しかし、その後に続く秋田氏の主張は、だからこそ日米同盟強化しかないという。
すなわち秋田氏はこう主張する。
「では日本はどうすべきなのか。 理想をいえば、中国を含めたあらたな枠組みをつくり、核・ミサイル軍拡を防ぐのが最良だ。その目標は追求すべきだが、中国が応じる兆しは全くない」と。
彼は本気でそう考えているのか。
もち論、そうではない。
はじめから日米同盟強化ありきだ。
それを言うために、中国を悪者にしているのだ。
秋田記者は、対米従属の日本が中国を説得できるとでも本気で思っているのか。
安倍首相に習近平主席を説得できるとでも思っているのか。
もしそうなら、秋田記者はおめでたい。
知っていながらそう言っているなら読者をバカにしている事になる。
おためごかしの前置きの後で、彼はこう本音を書いている。
「ならば、日本が急ぐべきは、中ロや北朝鮮核ミサイルを増強しても米国の『核の傘』が揺らがないよう、日米の連携をより密にすることだ」と。
野党共闘の最大の問題は、これに正面から挑む安保・外交政策を持つ共産党が、野党共闘を優先してその主張を封印してしまったところだ。
かつて非武装・中立を唱えた社会党は、いまでは枝野立憲民主党に吸収されて恬として恥じない政党になってしまった事だ。
このままでは日本から野党がなくなっていく。
私がそう警鐘を鳴らす理由がここにある。
中距離核戦力全廃条約の破棄にまるで危機感のないいまの政治は深刻である(了)
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