安倍外遊はとどまることを知らない。
欧州から帰って来たと思ったら、また25日から訪中する。
私が外務官僚の時は、外遊といえば国会が休みのすき間を狙って計画を組むものだったが、いまでは外遊のすき間を見つけて国会を開くことが当たり前のようになってしまったごとくだ。
しかし、今度の訪中は、これまでの安倍首相のパフォーマンス外遊と違って重要な外遊だ。
その意義は大いに認めてしかるべきだ。
なにしろ、日中平和友好40年を祝い、それをきっかけに、尖閣国有化以降冷え切って来た日中関係を改善するものであるからだ。
本来なら、安倍首相もメディアももっと大騒ぎをしてもよいはずだ。
しかし、訪日を明後日に控えているというのに、安倍首相もメディアもなぜか喧伝しない。
その理由をきょう10月23日の朝日新聞が見事に教えてくれている。
米中対立が深まる中、「習近平主席が安倍首相に近寄ってきた」という宣伝文句とは裏腹に、実は安倍首相が習近平主席の中国に近寄ったからだ。
すなわち、北方領土問題でプーチン大統領とうまくいかず、いつ米軍を撤退させて日米同盟の根幹を揺るがすかわからないトランプ大統領に身構える安倍首相は、通産官僚出身の今井尚哉秘書官のシナリオに沿って、それまで消極的な一帯一路を一転して評価し、中国との経済関係改善に舵を切ったというわけだ。
しかし、それがすんなりうまく行くなら、もっと喧伝しているはずだ。
それを喧伝できないもうひとつの理由があるのだ。
それは、急速に日中が経済関係を深めると、いつ何時、米国が横やりを入れて来るかわからないからだ。
安倍首相よりはるかに敏感な財界団体幹部はこう恐れている。
「我々が日中関係を見る場合の変数には米国が入ってくる。米国がどう介入してくるかで、がらっと変わるかもしれない」と。
そして、やはり安倍首相の歴史認識だ。
安倍首相がその間違った歴史を改めない限り、中国との真の友好関係は築けない。
反日事件が起きればすべては水泡に帰す。
そのおそれが今度の安倍首相の訪中でも消えないのだ。
そして、最後に、どのメディアも書かない、もうひとつの喜べない理由がある。
それは今度の安倍訪中は習近平主席の招待ではなく、李克強首相の招待であるということだ。
つまり中国から見れば安倍首相は習近平による国賓ではなく、トランプ大統領や韓国の文在寅大統領と同等に扱ってもらえないのだ。
その一方で、来年、習近平主席が来日した時は、習近平主席は天皇陛下の国賓となるのだ。
象徴天皇制の日本であるから、やむを得ない面は確かにある。
しかし、習近平主席の判断一つで、それはどうにでもなるのだ。
習近平主席は、意図して世界に自分は安倍首相より一段高い立場にある事を表明しているのだ。
それがわかっているから、安倍首相も、そして安倍首相を忖度するメディアも、今度の安倍訪中を熱烈歓迎できないのである(了)
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